4年に1度のチャイコフスキーコンクールのバイオリン部門で
見事！日本人の神尾真由子（さん）が満場一致の優勝という快挙！！
関係者の話によりますと、神尾さんの演奏が終わった瞬間に
優勝が決まっていたという話です。
21歳とは思えないその情緒的な演奏は、幼い頃からプロの演奏家として
ステージに立っていた経歴から培われたものでしょうね。

さて、この番組では、「砂糖は脳のエネルギー源」ということで
毎月一回、想像力豊かで、優れた感性を持ち
後世に名を残した人物にスポットを当てています。

今月は、ロシアの作曲家「チャイコフスキー」をピックアップします。

チャイコフスキーといってまず、思い浮かぶ代表作といえば
やはり3大バレエ音楽でしょう。
「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「眠れる森の美女」
あまりにも有名で、誰もが知っていますよね。
チャイコフスキーの音楽は、叙情的で流麗、メランコリックな旋律、
絢爛豪華なオーケストレーションでたいへん人気があります。

クラシック入門などの企画では必ずチャイコフスキーの曲が挙げられますよね。
作風はリズムの天才と言われ、曲想はメルヘンチックであり
ロマン濃厚といわれたりもします。しかし、バレエ史上最も重要な
作曲家であるチャイコフスキーの生涯には、実はいくつかの謎があるんです。
その謎に触れる前に、簡単に彼の生涯を紹介しておきましょう。

チャイコフスキーは1840年にウラル地方で生まれ、幼い頃から
卓抜した音楽的才能を示し、四歳のときにはもう歌を作曲しているんです。
法律学校を卒業し、いったんは役人になったんですが、
四年で辞職して音楽学校に入学し、本格的に作曲を勉強。
作曲家として出発しました。遅いスタートではあったものの、
その後は順調に名声を高めていったんです。
ただ、順調とはいえ、暮らしは楽ではありませんでした。
それを安定させてくれたのはフォン・メック夫人という人なんですね。

このチャイコフスキーと彼女との関係というのも、かなり謎めいています。
最初、夫人はチャイコフスキーに作曲を依頼したんですが、
1976年、チャイコフスキーに「あなたを援助したい」という手紙を
よこしたんですね。彼女は大富豪の未亡人で、子どもが十一人いましたが、
「こんな素晴らしい才能の持ち主が生活に苦しむなんて」という
純粋な気持ちから援助を申し出たらしいんです。
チャイコフスキーは喜んで申し出を受けました。
（ちなみに、若き日のドビュッシーも
　一時期フォン・メック夫人の援助を受けているんですよ）

二人の一風変わった関係は十四年続きましたが、
なんとその間に二人は一度も会っていないそうです。
文通だけの交際だったそう。
そして十四年後、突然、夫人は「破産したので、援助を打ち切る」という
手紙を送ってきました。チャイコフスキーが手紙を出しても、梨の礫。
どうして夫人が突然に援助を打ち切ったのかは謎でなんですね。
というのも破産は事実ではなく、一方的断絶はどうやら
夫人の気まぐれによるものらしいんです。いずれにせよ、
突然の夫人の心変わりはチャイコフスキーに深い傷を与えた。

また、フォン・メック夫人からの経済的援助の申し出があった
翌年に書かれたのが『白鳥の湖』なんですが、このストーリーを
誰が書いたのかも謎に包まれています。
いかにもどこかの国の昔話にありそうな話なんですが、
そのような昔話は存在しないようなんですね。
あまりにも有名な「ソードレミファソーミソーミ」というテーマ旋律を聴くだけで
思い出す、悲しくも美しい物語。これは、ムゼウスという人が書いた
幻想物語を元にチャイコフスキー自身が創作したのではないか、というのが
有力説ですが、いずれにしてもこの悲恋の傑作は、チャイコフスキーの
心の優しさから生まれた夢物語なのかも知れません。

ところで、チャイコフスキーコンクールは4年ごとに開催されるんですが、
今回のチャイコフスキーコンクールは、サッカーのワールドカップと
重なったために、スポンサーの意向で1年延期されたそうです。

次回は2010年に開催の予定。その時もまた日本人の若き才能が、
大いに活躍してくれると嬉しいですね。

では、また来週！