今日は桃のお話です。

毎年夏になると食べたくなるのがスイミツですね。
桃というのは、日本では良いイメージで使われることが多いようです。
桃太郎、桃の節句、桃源郷・・。
原産地の中国では、桃は邪気を祓い、
不老長寿を与える植物として親しまれています。

桃で作られた弓矢を射ることは悪い鬼をはらい、
そして桃の枝を畑にさすと虫除けのまじないになるそうです。

また、桃は再生と豊穣の春をあらわし、桃の花の冠は
純潔の象徴として、新郎新婦の頭に飾られました。
　
そして、桃の実は、長寿を示すといわれ
お祝い事には、桃の実を模った煉り餡入りのお饅頭を食べる習慣があります。
札幌の中華レストランでも結婚披露パーティーをあげると、
ケーキカットの時に桃饅頭をウエディングケーキのように高く積み上げた、
桃饅頭ケーキが出てくるんです。
とっても可愛らしいんですよ。

日本でも中国でも同じように、桃は邪気を祓う力があると考えられています。
「古事記」では、いざなぎのみことが桃を投げつけ、女鬼を退散させました。

こう聞くとも、桃はとてもパワフルなイメージになってしまいますが
温暖な地域で栽培されヴェルヴェットのような産毛に
覆われたみずみずしい実をつける桃は
もうちょっとやわらかいイメージがぴったりだと思います。
そのせいなのか、桃の花言葉は「恋の奴隷」だとか、「あなたに心奪われた」
また、「チャーミング」というものもあるそうです。

ところで、日本にも桃饅頭のように可愛らしい桃のお菓子があります。
「桃カステラ」という長崎のお菓子をご存知でしょうか？
白地にピンクの桃の実と緑色の葉があしらわれたカステラです。
長崎では伝統菓子として、桃の節句に使われます。

初節句を迎える女の子のおうちが、お祝いとして友人知人に配るそうです。
女の子の出産祝いのお返しに贈ることもあるそうで、
長崎ではそれぞれのお菓子屋さんによって
多種多様な桃のカステラを作ります。
3月の桃の節句近くには、長崎中のデパートやお菓子屋さんに
桃カステラが並ぶそうでどれにしようか、迷ってしまう程なんですって。

さて、余談ですが、先日桃のようにとてもフレッシュな小説を読みました。
「卵の緒」という瀬尾まいこさんのデビュー作です。
2007新潮文庫の100冊にも入っている作品で、「僕は捨て子だ」という
衝撃的な書き出しで始まるこの作品、とても個性的で、
とてもとんでいる作品だと思いました。

とんでいる、というのは、この小説に出てくるお母さんが
「へその緒」を見せてと子供に言われ
なにやら箱を出してくるんですが、そこには白く輝く卵の殻が入っている。
そして「21世紀だから、あなたを卵で産んだのよ」というわけです。
そのお母さんの考え方、行動すべてが、常識という枠を
飛び越えている、飛んでいるんですよね。

お話のラストで、この親子の真実が明かされるのですが、とても素敵なんですよ。
こんなお母さんはありえないと思いながらも、こんなお母さんがいたら、
どんな自分も個性的でオーケーじゃないか、と思えるんじゃないかな。
無意味な競争や、無駄な自己顕示欲、そんな重たいコートを脱ぎたい方、
良かったら読んでみてください。

では、また来週！