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2007年11月23日

ラム酒のかかったアイスクリームのお話

今日は、江國香織さんの小説「ぼくの小鳥ちゃん」に登場する文字通り、
小さい鳥である「小鳥ちゃん」の大好物
「ラム酒のかかったアイスクリーム」のお話です。

江國香織さんの「ぼくの小鳥ちゃん」というキュートなイラスト入りの本は
ぼくという若い男性と、その彼女、そしてある日突然
ぼくのところにやってきた小鳥のお話です。

雪の日の朝、ぼくの部屋に小さな小鳥ちゃんが舞い込んできます。
体長10cm、真っ白でくちばしときゃしゃな脚だけが濃いピンク色。
「あたしは、そのへんのひよわな小鳥とは違うんだから」ときっぱり言い、
「一番食べたいものは、ラム酒のかかったアイスクリームよ」と、断言するんです。

小鳥ちゃんは「あたしのご飯をそれにして。三度三度それにしてもかまわないのよ」と
実質的に居候なのに態度は高飛車で
でも、その物腰から何故か憎めないものがあるんですよね。

この物語で、ラム酒入りのアイスクリームが食べたくなっちゃう、
印象的な場面があるんですけれど、
それは、小鳥ちゃんが「あたし病気になっちゃったみたい」と告白するシーンです。

ぼくは「なんの病気だろう」と色々と思いを巡らすのですが、
そんな僕の心配をよそに、小鳥ちゃんは
「丁度良かったの。あたし一度病気になってみたいと
 思っていたところだから」と静かに言い
獣医につれていくというぼくの意見を断固拒否。

「あなたは病気ってものが全然わかってない。
 病気っていうのは一日中寝てなきゃいけないのよ。
 そして一日2回お薬をもらう。お薬はラム酒のかかった
 アイスクリームよ、言っとくけど」
なーんて、言っちゃたりするんです。
ただの仮病に、おねだりのおまけつき。

でも、ぼくは、こんな小鳥ちゃんと生活が次第にいとおしく、
手放せないものになってゆくんですよね。

すごく雪の降った寒い日には、ずる休みして、あったかいお部屋で
ラム酒のかかったアイスクリームなんて、すごく贅沢な気がします。

さて、アイスクリームというのは老若男女を問わず、
どの世代、そして男性女性にも好まれるスイーツの決定版です。
特に北海道は、寒い冬にあったかいお部屋で食べる
プレミアムアイスの人気が全国一高いんですよね。

「ぼくの小鳥ちゃん」は、ある冬の日の物語。
小鳥ちゃんが、「ぼく」の家にやってくるのも、
ヒーターをつけるほど寒い日だった訳ですね。
ぽかぽかの部屋でぬくぬくしながら、甘くって
冷たい「アイス」というのは、華奢で、小さな女の子の
「小鳥ちゃん」のイメージのぴったりという気がします。

でも、その一方で、そのアイスのかかっているのが「ラム酒」となると、
これは話が違ってきます。ラムは、かなり強烈なお酒です。

ラム酒の発祥は、バルバドス島とされているんですね。
「ラム」という名前の由来は、島の住民が飲んで騒いでいる様子を、
イギリス人がみて表現した言葉が語源になっているようで
その意味は「興奮」なんだそうですよ。

また、発祥はプエルトリコ島とするものもありますが、
いずれにしてもカリブ海が原産のようです。
なので、映画や物語の中で、カリブの海賊が飲むものといえば、
やっぱりラムなんですよね。

小鳥ちゃんは、そのへんにいるやわな小鳥とは訳が違うと
自分で言っているくらいですから、甘いアイスの上にかかっているのは、
海賊が愛したくらい強烈で、“悪”の臭いのするものじゃなきゃ、
いけないのかもしれません。

ところで、18世紀になると、ラムはイギリス海軍の支給品となりましたが、
でもとても強いお酒だったため、エドワード・バートンという提督は
水割りで支給することにしたんです。
部下たちはこの薄いラムのことを、グログラムという生地で
出来たコートを着ていた提督のあだなから
「グロッグ」と呼ぶようになったそうです。
現在でも、水割りラムは「グロッグ」と呼ばれています。
因みに泥酔することは「グロッギー」といって、
日本で使われる「グロッキー」という言葉は
この「グロッギー」がなまったものなんだそうですよ。

余談ですが、「ぼくの小鳥ちゃん」という小説は、
私が骨折した脚のワイヤーを抜く手術で入院中に
友達がお見舞いに持ってきてくれたものなんです。
なんでもないようなお話なんですけれど、すっごくあったかい気持ちに、
ちょっぴりせつない気持ちも溶け合って、心に残る一冊になりました。

物語に登場する「ぼくの彼女」は、すごくしっかりしていて、
きちんとした性格の女性なんです。
いつも、真っ白なパリッとアイロンのかかったハンカチを膝に広げるような。
一方小鳥ちゃんは、小悪魔的で、ちょっとずるいところや、
勝ってきままなところもあるんです。
でも、すごく自由!

この物語を読むと、「自由と、孤独」はどちらか片方だけ
やってくることはないような気がします。
自由は大好きだけど、自由であることは、孤独も受け入れないといけないんだなって。
機会があったら読んでみて下さいね。

それじゃあ、また来週!


  
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